日本透析医学会雑誌
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除水不全を呈するCAPD患者におけるトラネキサム酸 (tranexamic acid) の除水量増加作用
栗山 哲中山 昌明友成 治夫沼田 美和子林 文宏疋田 美穂川口 良人細谷 龍男
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1997 年 30 巻 12 号 p. 1369-1373

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抄録

現在, 除水不全を呈するCAPD患者に有効に作用する薬剤はない. 本研究では, 除水不全を認めるCAPD患者において, 抗プラスミン剤であるトラネキサム酸 (tranexamic acid: TNA) が改善効果を有するか否かを検討した.
限外濾過不全I型の除水不全を認めるCAPD患者5例において, 先行するCAPDスケジュールを変更せずにTNA 1500mg/日を2週間経口投与し, その薬理効果を検討した. その結果, 1) TNA投与で一日総除水量は全例で有意に増加した. また, 体重は5例中3例で有意に減少した. 2) TNAはCAPD排液中の電解質, UN, Cr, アルブミン等の総除去量に影響を与えなかった. また, PETのD/PcrやKT/V, PCRにも影響を与えなかった. 3) TNA投与により血中およびCAPD排液中のブラジキニン濃度, 血中の組織プラスミノーゲンアクティベーター (tPA) 濃度は有意に低下した.
以上, TNAは除水不全を呈するCAPD患者で除水量を増加させる. その機序は不明であるが, ブラジキニン, tPAの抑制を介した腹膜透過性の変化が関与している可能性が示唆された.

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