日本透析医学会雑誌
Online ISSN : 1883-082X
Print ISSN : 1340-3451
ISSN-L : 1340-3451
透析患者の起立性低血圧症状に対するL-threo-DOPSの臨床効果
多施設共同二重盲検比較法による第3相試験
越川 昭三秋澤 忠男飯田 喜俊丸茂 文昭川口 良人白井 大禄今田 聰雄山崎 親雄鈴木 正司椿原 美治秋葉 隆中島 光好
著者情報
ジャーナル フリー

1997 年 30 巻 7 号 p. 941-959

詳細
抄録

維持透析患者の種々の合併症の中で, 透析後の起立性低血圧に伴う諸症状は透析患者の日常生活の重要な阻害因子であるが, 現在は的確な治療手段がない.
L-threo-3,4-dihydroxyphenylserine (L-DOPS) は, 経口投与可能な天然型ノルエピネフリンの前駆物質で, 我々はこれまでに, 本剤が透析患者の透析直後の起立性低血圧と透析後から翌々日までの自覚症状の改善に高い有用性を有することを報告してきた. 今回, 先の用量設定試験で有効性の認められたL-DOPS 400mgとプラセボの二重盲検比較試験を実施した.
対象は, 透析終了後の起立時に収縮期血圧 (2回の透析日における平均値) が15mmHg以上低下し, かつそれに付随する自覚症状を呈する維持透析患者107例で, そのうち, 有効性を86例, 安全性を104例で評価した. 各透析日の透析開始約30分前に薬剤を4週間投与し, 透析終了時の起立試験における血圧と透析終了から透析翌々日までの自覚症状を評価した. 透析後血圧と起立による平均血圧の低下はL-DOPS群で有意に抑制され, 「めまい・ふらつき・たちくらみ, 起立障害, 倦怠感・脱力感」の改善度がL-DOPS群で有意に高かった. 血圧と自覚症状とから判定した最終全般改善度は, L-DOPS群がプラセボ群に比して有意に優れ (中等度改善以上: 53.3% vs 14.6%), より重症と考えられる症例で特に効果が認められた. 副作用はL-DOPS群に3例, プラセボ群に6例みられたがいずれも重篤なものではなく, 臨床検査値の異常変動は両群ともに認められなかった. 以上の結果から, L-DOPSの透析患者の起立性低血圧とその付随症状に対する有用性が確認された.

著者関連情報
© 社団法人 日本透析医学会
次の記事
feedback
Top