日本透析医学会雑誌
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維持透析患者における冠血流予備能の検討
宇都宮 正範太田 真杉本 健一田村 忠司小野 益照斎藤 広重岡田 秀雄池田 恵一川口 良人細谷 龍男
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1998 年 31 巻 5 号 p. 927-932

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抄録
透析患者における冠循環動態を明らかにするために, ドプラーガイドワイヤーを用いて冠血流速および冠血流予備能を測定し患者背景因子と比較検討した. 対象は胸痛を主訴として来院した血液透析患者で, 症状あるいは運動負荷心電図から虚血性心疾患が疑われて冠動脈造影を施行し, 冠動脈本幹に25%以上の狭窄を認めなかった7例で, 平均年齢は58歳, 平均透析期間は94か月である. これに対し, 対照例は同様に冠動脈本幹に25%以上の狭窄を認めなかった非腎不全患者8例とした.
冠動脈血流速の計測は, ドプラーガイドワイヤーを左前下行枝近位部に留置し, パルス・ドプラー法にて行った. 安静時の冠血流速は硝酸イソソルビド2.5mg冠動脈注入後に計測し, 平均最大流速 (APV), 瞬間最大流速 (MPV), 拡張期と収縮期の平均流速の比 (DSVR) の3つの指標を記録した. 冠血流予備能は, 塩酸パパベリン10mg冠動脈注入後に最大冠拡張が得られた状態でのAPVと安静時のAPVの比として求めた. また, 全例にMモード心エコー図および血液生化学検査を施行した.
安静時のAPVおよびMPVは, 透析患者が対照患者に比較して有意に高値を呈していたが, 塩酸パパベリン10mg冠動脈注入後のAPVおよびMPVは, 両群間において有意差を認めなかった. 冠血流予備能は透析患者が2.3±0.7で, 対照患者 (3.9±0.6) に比べ有意に低値であった. また, 透析患者は左室重量係数が大きく, 貧血状態にあることが観察された.
以上より, 透析患者は冠血流予備能が低下しており, その原因には安静時冠血流速の増大が重要であると考えられた.
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© 社団法人 日本透析医学会
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