日本透析医学会雑誌
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血液透析 (HD) と血液濾過透析 (HDF) における一酸化窒素化合物 (NOx) の動態
海野 鉄男草野 英二井上 真柳場 悟大野 修一本間 寿美子田部井 薫上野 幸司後藤 邦広久野 宗寛浅野 泰
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1998 年 31 巻 5 号 p. 933-938

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抄録
一酸化窒素 (nitric oxide: NO) は血管拡張性物質として知られているが, NOの作用時間は短く数秒であり, NO2やNO3などNOxとして代謝される. 透析患者では一般に血中NOx濃度は健常人より高値であるとされている. また, NOの透析低血圧への関与を示唆する報告もある. 一方, HDFやHDの変動除水は透析低血圧例に対し循環動態の安定に有効であることが示唆されている. そこで今回, HDとHDFにおける血中NOx濃度の動態からNOの関与を検討した. 安定維持期血液透析患者7名を対象とした. HDとHDFを交互に施行し, 透析前と終了時の血中NOx濃度を, また, 透析開始2時間後においてはダイアライザー前後での血中NOx濃度をTCI-NOX 1000 (東京化成社製) にて測定した. さらに, HDにおいて一定除水と変動除水を行い, 透析前後の血中NOx濃度を測定し比較した. 透析患者の血中NOx濃度は健常人に比べて高値だった. HDに比べ, HDFでは透析前後の血圧の低下率は有意に少なかった. 両者とも透析により血中NOx濃度は低下したが, 透析前後の血中NOx濃度, 減少率は両者間で有意差は認められなかった. また, ダイアライザー通過前後の血中NOx減少率は, HDとHDFで差はみられなかった. また, HDにおける一定除水と変動除水では後者が有意に血圧の低下率が少なかったが, 透析前後の血中NOx濃度, 減少率には有意差が認められなかった. HDFおよび変動除水は, 一定除水のHDに比べて血圧の変動は少ないが, その機序に関してはNOの関与は低いと考えられた.
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© 社団法人 日本透析医学会
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