日本透析医学会雑誌
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血液回路から溶出する内分泌撹乱物質Di-(2-ethylhexyl) phthalateの溶出の実態とハイパフォーマンス膜による除去についての検討
大橋 篤日比谷 信中上 寧加藤 政雄芳川 博人鳥羽 貴子久志本 浩子勝又 秀樹村上 和隆長谷川 みどり富田 亮長谷川 寛鹿野 昌彦川島 司郎
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1999 年 32 巻 10 号 p. 1291-1297

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抄録

近年, 一部の化学物質が内分泌撹乱物質として問題となっているが, 塩化ビニル製血液回路から溶出するフタル酸ジエチルヘキシル (DEHP) はその1つである. 我々は, 血液透析の際にDEHP量を測定し, ハイパフォーマンス膜 (HPM) がDEHP除去に有用であることを明らかにした.
先ず, 体外実験で, 血液回路にアルブミン (Alb) 溶液を灌流させ, DEHP濃度を測定した. 次に, 回路に再生セルロース (CU) 膜, セルローストリアセテート (CTA) 膜を各々装着し, Alb溶液を灌流して, 最終的なDEHP溶出量を測定した. その結果, 回路からのDEHP溶出量は0.95mgであり, 回路にCU (AMFP 110) 膜を装着した場合のDEHP溶出量は0.72mg, CTA (FB 90 U) 膜では0.17mgであった. 次に, 膜の細孔径の違いがDEHPの溶出量に及ぼす影響をみるために, 膜素材 (CTA) は同じであるが, 細孔径が異なるFB-E (55Å) とFB-F (75Å) の比較を行った. その結果, DEHPの溶出量は, FB 50 Eが0.47mg, FB 50 Fは0.29mgであり, 細孔径の大きな膜では溶出量が減少した.
臨床実験で, CU膜, CTA膜, およびPS膜で1年以上血液透析を施行した患者のHD前, 後の動脈血液中DEHP濃度を測定した. HD前のDEHP濃度は, 全ての患者で感度以下であったが, 透析終了時には, CU群0.69±0.31mg/lに対し, CTA膜群0.41±0.07mg/l, PS膜群0.25±0.21mg/lで有意に低値であった. 以上の結果より, 親水性のCU膜ではDEHPの除去能は低いが, 疎水性の高いHPMはDEHPを吸着除去でき有用である.

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