日本透析医学会雑誌
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ステロイド療法とその後の外科的治療により改善がみられた硬化性被嚢性腹膜炎の1例
竹田 慎一高枝 知香子高桜 英輔川西 秀樹
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1999 年 32 巻 11 号 p. 1401-1405

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抄録

著しい炎症反応を伴って発症した硬化性被嚢性腹膜炎 (SEP) 症例に対し, ステロイド投与後の外科的治療が有効であったので報告する. 症例は37歳男性で, 1983年11月にCAPDに導入された. 1997年9月腹膜平衡試験がカテゴリーhighであり, また腹膜に石灰化が認められたため, CAPDカテーテルを抜去し, 維持血液透析に移行された. その1週間後に38℃台の発熱および腹部膨満感が出現したため入院となった. 入院後, 腹部単純写真にてニボー形成が, また腹部CTにて腹水および瀰漫性の腹膜肥厚が認められたことよりSEPと診断した. また, 入院時の検査成績上CRP 22.1mg/dlと高度の上昇がみられた. 絶飲・絶食, イレウス管挿入および中心静脈栄養 (TPN) にて初期治療を行ったが, 全身状態の改善が得られなかった. そこで, ステロイド療法として, methylprednisolone 500mg 3日間静脈内投与後prednisolone 40mg (0.8mg/kg) の投与を開始したところ, 全身状態は著明に改善した. 以後はCRPを指標にprednisoloneを漸減し, 1998年10月で中止することができた. しかしながら, 小腸閉塞による症状を繰り返しTPNを離脱することができなかったため, 1998年11月に開腹術に踏み切った. 手術時, 大部分の腸管は膜で覆われており, 小腸全域について剥離を行った. 術後経口摂取を徐々に始め, 1999年2月にはTPNを離脱することができた. 以上, ステロイド療法後の開腹手術はSEPの治療法として有効と思われた.

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