日本透析医学会雑誌
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慢性透析患者における抗結核薬が奏効した腹部リンパ節腫大の1例
劒持 雅一森下 紀夫石井 博村上 努士常光 謙輔
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1999 年 32 巻 2 号 p. 129-132

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抄録

我々は原因不明の腹部リンパ節腫大を経験した. 患者は慢性透析患者で定期検査にて偶然, エコー上, 腹部リンパ節の腫大を指摘された. CT上, 腹腔動脈周囲に集簇するリンパ節の腫大を認めた. その際, 特に臨床症状は認められず, 腹部内臓の精査にても異常を認めず経過観察していた. 3か月後, 不明熱, 腹水貯留等の症状を認めるようになった. 腹水穿刺による細胞診, 細菌培養でも確定診断はつかず, ツ反も陰性であった. 発熱は持続し, 経口摂取も困難となり全身状態も悪化してきたため確定診断がなされないまま, 抗結核薬投与を開始した. その3日後には解熱し, 次第に食欲も回復, 3か月後には腹水も消失し, リンパ節も縮小した. 以上より, 治療的診断として腹部リンパ節結核が考えられた. 慢性透析患者の結核症は予後不良であり, 診断にとらわれず早期に抗結核薬療法を開始することが重要であると痛感させられた.

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