日本透析医学会雑誌
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高齢者透析導入時の特徴とその移り変わりの検討: 自治医科大学における血液透析導入の検討 (1)
雨宮 守正大友 貴史伊藤 千春高橋 秀明池田 裕美黒巣 恵美藤郷 秀樹船山 いずみ井上 真柳場 悟草野 英二浅野 泰
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2000 年 33 巻 3 号 p. 189-194

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抄録

目的: 近年透析人口増加に伴い, 高齢者の透析導入が増加している. そこで高齢者透析導入の特徴を把握するため, 当院における導入患者を比較検討した.
対照と方法: 1989年から1998年までの間に, 血液透析に導入した719人を若年群 (65歳未満; 517名) と高齢群 (65歳以上; 202名) に分け, 導入時の臨床所見を比較した.
結果: 1989年に19%であった高齢群の透析導入は, 1998年には41%に増加した. 若年群に比較し高齢群の特徴として以下の3点が挙げられた. (1) 慢性糸球体腎炎 (CGN) による導入が少なく, 腎硬化症による導入が多い. (2) 心胸比が大きく, 体液過剰を呈する率が高い. (3) クレアチニンが低く, 消化器症状を呈する率が低い. また1989, 90年に導入した145人と比較し, 1997, 98年の170人において, 高齢群で腎硬化症の割合が有意に減少し, 糖尿病性腎症 (DN) の増加がみられた. 若年群ではDNの割合が有意に増加しCGNが有意に減少した. 疾患の特徴としては若年群の中でDNはCGNに比べ心胸比, リン, 重炭酸イオンが有意に高く, 平均血圧, 尿毒窒素, クレアチニンが有意に低いという特徴があった. しかし高齢群でのDNの特徴はクレアチニンが低いことのみであった.
考察: 近年高齢者の透析導入が増加し, その内訳にDNによる導入の増加が伴っていた. しかし, 若年群にみられたCGNとDNの違いは高齢になると薄らいでしまった. 高齢者の透析導入には高齢者そのものの特徴を理解し対処することが望ましいと考えられた.

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