日本透析医学会雑誌
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透析患者における脳血管障害についての臨床的検討
脳出血と脳梗塞の比較を中心として
野村 威雄三股 浩光今川 全晴傅 淑霞野村 芳雄亀川 隆久酒本 貞昭末友 祥正菅 淳一谷川 龍彦堤 智昭和田 瑞隆内田 一郎
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2000 年 33 巻 7 号 p. 1093-1099

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抄録

慢性透析患者における脳血管障害発症症例について臨床的に検討した. 対象は慢性維持透析中 (血液透析38例, CAPD 2例) に脳血管障害を発症した40例 (脳出血18例, 脳梗塞16例, クモ膜下出血5例, 慢性硬膜下血腫1例) で, 男性26例, 女性14例であった. 発症時年齢は平均63歳, 発症までの透析期間は平均78か月であった. 透析導入原疾患は慢性糸球体腎炎17例, 糖尿病性腎症10例, 嚢胞腎3例, その他10例であった. 病型別透析導入原疾患は脳出血群では慢性糸球体腎炎7例 (38.9%), 糖尿病性腎症2例 (11.1%) であり, 脳梗塞群では慢性糸球体腎炎8例 (50.0%), 糖尿病性腎症7例 (43.8%) であり, 脳梗塞群で糖尿病性腎症が有意に多数を占めた (p=0.025). 各疾患の死亡率はクモ膜下出血 (60.0%), 脳出血 (44.4%), 脳梗塞 (37.5%) の順であり, 脳出血の死亡例はすべて発症後2週間以内であった. また脳梗塞群において脳出血群と比較して心疾患を有意に多く合併していた (p=0.049). 出血性疾患では透析前高血圧が顕著であり, 収縮期平均血圧は脳出血群173mmHg (p=0.014), クモ膜下出血群173mmHgであった. 脳出血群の半数以上は収縮期血圧140mmHg以上, 拡張期血圧90mmHg以上であり, 透析前血圧の上昇に伴って, その発症例数も増加する傾向を認めた. 治療については大多数の症例で保存的治療のみ施行されているが, 脳出血3例に対して開頭血腫除去術, V-Pシャント術, 脳動脈瘤破裂2例に対して脳動脈瘤クリッピング術, 慢性硬膜下血腫1例に対して穿頭血腫除去術が施行され, 全例良好な生命予後を獲得できていた.

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© 社団法人 日本透析医学会
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