日本透析医学会雑誌
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透析患者におけるエストロゲン受容体遺伝子多型と骨病変
浅井 友基桑原 道雄佐藤 和則寺田 典生栗原 怜米島 秀夫秋葉 隆丸茂 文昭
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2001 年 34 巻 1 号 p. 33-39

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抄録

エストロゲン受容体 (ER) のPvuII, XbaI制限酵素断片長多型が透析患者の骨病変に影響を及ぼしているかを検討した. 患者末梢血から抽出したゲノムDNAを鋳型としてpolymerase chain reaction (PCR) を行い, ERのイントロン1とエクソン1を含む領域を増幅した. 得られたPCR産物を制限酵素PvuII, XbaIと反応して遺伝子多型を決定した. また骨生化学的指標として血清Ca, P, Al-P, tartrate-resistant Ac-P, intact-PTH, osteocalcinを測定するとともにdual energy X-ray absorptiometry (DEXA) 法にて腰椎正面 (L2-L4) および橈骨 (遠位端1/3) 骨塩量測定を行った. PvuII遺伝子多型の分布は, 男性 (n=126) がPP 23.0%, Pp 51.6%, pp 25.4%であり, 女性 (n=81) がPP 19.8%, Pp 38.3%, pp 42.0%であった. XbaI遺伝子多型の分布は, 男性 (n=120) がXX 5.8%, Xx 37.5%, xx 56.7%であり, 女性 (n=78) がXX 9.0%, Xx 38.5%, xx 52.6%であった. 遺伝子多型別に比較した骨生化学的指標は, 男女のどの3群間においても有意差は認められなかった. 腰椎および橈骨骨塩量のZ scoreもすべて3群間で有意差はなかった. 腰椎骨塩量のZ scoreと年齢との相関では, 女性のPvuII遺伝子多型でPP群の回帰直線勾配がPp群, pp群より有意に高値であり (p<0.05), 骨塩量減少率が大きいことが示唆された. しかし, 他群における比較では有意差を認めなかった. 以上, ERのPvuII遺伝子多型が, 女性透析患者の腰椎骨塩量減少に関与する可能性が示唆された.

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