日本透析医学会雑誌
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Lipoprotein (a) ならびにapolipoprotein (a) phenotypeは血液透析症例で冠動脈疾患発症の危険因子となるか
大橋 宏重小田 寛大野 道也渡辺 佐知郎琴尾 泰典松野 由紀彦
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2001 年 34 巻 8 号 p. 1169-1173

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抄録

冠動脈疾患 (coronary artery disease, CAD) の発症頻度が慢性血液透析 (hemodialysis, HD) 症例で高いことが問題になっている. HD症例では中性脂肪 (triglyceride, TG) の上昇とHDL-コレステロール (high density lipoprotein cholesterol, HDL-C) の低下が脂質代謝異常の特徴と考えられてきたが, 近年, lipoprotein (a) 〔Lp(a)〕 の上昇しているHD症例の多いことが報告されるようになり, なかでもCADとの関連が注目されるようになった. また, apolipoprotein (a) 〔apo(a)〕 phenotypeのうちlow molecular weight (LMW) がHD症例でのCAD発症に関与していることが報告されるようになった. このような背景をもとに本研究では冠動脈疾患の既往が明らかでないHD症例を5年間, 前向きに (prospective) に経過観察し, Lp(a) ならびにLMWがHD症例でのCAD発症の危険因子となるかを検討した.
268名のHD症例のうち37名 (13.8%) にCADが発症した. その内訳は心筋梗塞22名, 狭心症7名, 無症状であったが何らかの機会に冠動脈造影 (coronary angiography, CAG) が施行され, 75%以上の有意狭窄を認めたもの8名であった. また今回の検討では年齢が高く, 基礎疾患が糖尿病性腎症 (diabetic nephropathy, DN) であり, LMWでLp(a) が高値を示すHD症例にCADが多く出現した. 多変量解析による検討からはLp(a) が30mg/dl以上, DN, LMW, 年齢65歳以上がCADの独立した危険因子であった.
以上により, HD症例では年齢, DNという基礎疾患を背景に, 遺伝的に決定されているapo(a) phenotypeのLMWならびにLp(a) が高値を示す症例でCADの発症する可能性の高いことが示唆された.

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