日本透析医学会雑誌
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急性腎不全を呈し血液透析を要した発作性夜間血色素尿症 (PNH) の2例
橋本 整司上田 峻弘城下 弘一桜井 哲男
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2002 年 35 巻 1 号 p. 63-67

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抄録

急性腎不全を呈した発作性夜間血色素尿症 (PNH) の2例を経験し, その病理所見を質的・経時的に検討した. 患者はハムテストや水砂糖試験でPNHと診断され, 溶血発作のため幾度か輸血治療等を受けていた.
症例1: 51歳, 男性. 昭和56年2月に高熱と下痢に引き続き乏尿に至り, 約1か月透析施行後に透析より離脱した. しかし, 2年後に敗血症により死亡した. 症例2: 54歳, 男性. 平成11年4月に高熱を機に急性腎不全に陥り, 回復するのに約1か月半の透析を要した. MRIのT2強調画像で皮質が髄質に比べて低信号を示すなど特徴的な所見を得た.
2症例とも急性腎不全からの回復期に腎生検を行った. その組織所見は類似し, 検索した時点では糸球体に著変なく, 著しいヘモジデリンの沈着を伴った近位尿細管細胞の壊死崩壊像を認めた. 間質は一部線維化し, 萎縮していた. これらの所見は急性尿細管壊死 (ATN) の像であった. これら2症例のPNHの急性腎不全は, 脱水と鉄の処理能力を越えたヘモジデリンの近位尿細管への著しい沈着により惹起されるATNがその本質で, 加えて繰り返す溶血発作による潜在性の尿細管の障害も付加されていると考えられた. 特に剖検例では著明な間質の線維化とリンパ球浸潤を認め, その所見は3年前の腎生検時より進行していた. この間に急性腎不全の既往はなく, 急性腎不全を惹起しない程度の溶血発作でも慢性の尿細管間質障害の進行が示唆された.

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