日本透析医学会雑誌
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血液透析患者の重症閉塞性動脈硬化症に対するLDL吸着療法の検討
吉矢 邦彦近藤 有蓮沼 行人岡 伸俊大前 博志原 章二原 勲守殿 貞夫
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2002 年 35 巻 11 号 p. 1441-1446

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抄録

血液透析患者の重症ASOに対して, LDL吸着療法の臨床的効果を検討した.
対象は9例の透析患者で, 原疾患は糖尿病が7例, 慢性腎炎が2例である. ASOの臨床症状は, Fontaine IV度すなわち潰瘍や壊疽を認め, 四肢の単純X線にて血管の石灰化を認めた. 症例は難治性であり, 薬剤治療や血管外科的治療に抵抗性であった. 方法は, LDL吸着療法を1クール10回施行した.
LDL吸着療法の結果, 検査所見は, 総コレステロール, LDLコレステロール, アポ蛋白分画のアポ蛋白Bが有意に低下した.
臨床的効果は, 3か月での短期予後は, 9例中3例が潰瘍の治癒を認め有効であった. 観察期間1年10か月での長期予後は, 9例中2例が有効であった. LDL吸着療法は, 脂質の異常を改善する. しかし, 臨床的効果は脂質の異常の改善だけでは説明がつかず, LDL吸着療法の作用機序として, 脂質系以外の多数の要素の関与が考えられる.
9例中6例の患者では, LDL吸着療法を血液透析と同時に施行した (同時療法). 同時療法は, LDL吸着療法の単独療法と比べ, コレステロール除去効率は差を認めず, 血液透析の単独療法と比べ, 透析効率についても差は認めなかった. したがって, 同時療法は患者の時間的な負担を軽減できる治療法である.
薬剤治療や血管外科的治療に抵抗性の透析患者の重症ASOに対して, LDL吸着療法は試みる価値があると思われる. またLDL吸着療法と血液透析の同時療法は有効な方法である.

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