抄録
群馬大学医学部附属病院において1995年1月1日から2000年12月31日までの6年間にシャントと腹膜透析カテーテル関連手術以外の手術療法を受けた慢性維持透析患者延べ213名について, 手術内容, 基礎疾患などを検討し, 特に1999年と2000年の全身麻酔下手術症例に関しては手術前検査値, 手術後合併症なども検討した.
各年ともに眼科系手術が約50%を占めていたが, 各科にわたりmajor surgeryが積極的に施行され, 心, 血管系手術は毎年施行されていた. 眼科系手術症例は糖尿病を基礎疾患として透析導入後比較的早い時期に手術が施行されていた.
1999年 (16例) と2000年 (14例) の全身麻酔下手術症例の検討では, 2000年症例の方が手術時平均年齢の高齢化傾向や平均維持透析期間の長期化傾向を認めた. また, Hct, Hb, TP, BUN, 血清クレアチニン値などの手術前検査値が改善していた. 手術後合併症は感染症 (手術創移開, 肺炎) が最も多く, 次に出血 (消化管出血や脳出血) が続いた. 手術後合併症出現症例の基礎疾患は糖尿病と悪性腫瘍が多くを占めた.
維持透析患者の周術期管理方法の改善により維持透析患者の手術適応は拡大し積極的に手術が施行されている. しかし, 基礎疾患に糖尿病と悪性腫瘍を持つ維持透析患者に関しては, 手術後合併症予防管理方法にまだ課題が残っている.