日本透析医学会雑誌
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透析患者に発生した腎実質浸潤を伴う腎孟移行上皮癌の1例
児玉 浩一長野 賢一宇野 傳治秋元 学川島 篤弘
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2002 年 35 巻 11 号 p. 1465-1468

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抄録

症例は77歳女性, 慢性糸球体腎炎による慢性腎不全にて1995年6月血液透析を導入された. 1999年3月無症候性肉眼的血尿を自覚し, 腹部単純CTにて右腎に腎実質と等吸収値を示す3×2cmの腫瘤を指摘されたため, 1999年4月27日当科紹介された. 一日尿量10-20mL, 尿路感染所見はなかった. 尿細胞診はclass IIであった. 腎動脈血管造影にて腫瘍はhypervascularityを呈し, 同時に施行した腹部CTにおいて腫瘤は早期濃染を認め, 遅延相では周囲実質よりも低吸収値を示した. 腎細胞癌を強く疑い, 1999年6月10日右腎摘除術を施行した. 病理組織学的には腎髄質に浸潤した右腎孟移行上皮癌 (PIT, G3>G2, INFβ, pT3, pR0, pL0, pV0) と診断された.
腎機能低下により造影剤の使用が制限されるため, 血液透析患者に発生した尿路上皮癌の術前診断は困難である. 透析患者に血尿がみられた場合, 尿路上皮癌の検索のため一連の検査が必要であると考えられた.

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