日本透析医学会雑誌
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治療困難であった真菌性腹膜炎の1例 -EPSを発症させないために-
大野 卓志清水 健司坂口 美佳吉本 忍今田 聰雄
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2002 年 35 巻 2 号 p. 119-124

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抄録

被嚢性腹膜硬化症 (encapsulating peritoneal sclerosis; EPS) の発症予防を目的とした難治性真菌性腹膜炎の治療方法を検討した. 症例は61歳, 男性. 1997年7月, 糖尿病性腎症由来の慢性腎不全のためCAPD療法を開始. 2000年2月に真菌性腹膜炎を発症したため, CAPDを中止し, 血液透析に移行. カテーテルを留置したまま連日腹腔内洗浄を行い, 抗真菌剤の経口投与と点滴静注を行った. その間, 腹痛, 発熱などの症状はなかったが, 排液混濁は持続していた. 同年8月の入院の機会にカテーテルを抜去した. その後, 腹膜炎は治癒し, 現在までEPSの発症は認めていない.
難治性真菌性腹膜炎は, EPSの発症誘因の一つと考えられており, 腹膜炎を治癒させることが先決であり, 真菌性腹膜炎発症時は, 腹腔内洗浄を繰り返しても腹膜炎の治癒は困難でEPSの発症を高める可能性もあり, 直ちにカテーテルを抜去する方が, 腹膜炎を治癒させ効果的であると考えられた.

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