日本透析医学会雑誌
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透析液超清浄化によるMDA-LDL, Ox-LDLおよびsCD-14の低減効果
岡 良成宮崎 雅史高津 成子国友 桂一国米 欣明
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2002 年 35 巻 5 号 p. 269-273

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抄録

日本透析医学会では1995年に透析液の末端でのエンドトキシン (ET) 濃度の許容上限を250EU/L, 達成目標を100EU/L以下と制定した. しかしこれらの数値の臨床的妥当性については, 制定当初より, 具体的なデータの裏付けがあったわけではない. 達成目標値として100EU/L以下で十分に安全なのか, 制定後にも十分な臨床的検討が加えられないまま容認されている現状である. 今回われわれは, 達成目標値以下のETレベルをさらに検出限界以下に清浄化して, この透析液の変化が生体に及ぼす影響を酸化ストレスの観点から検討したので報告する. 対象は当院で2型ダイアライザーを用いた通常透析を行っている透析歴1年以上の患者37例. 1999年12月に透析液供給システムの全面的改修を行い, 透析液末端のET濃度は平均39.0から1.0以下 (EU/L) に改善した. 改修前, 半年後, 1年後での酸化LDL (MDA-LDL, Ox-LDL), sCD-14, サイトカイン等の変動を検討した. 改修前と1年後の透析前データを比較すると, MDA-LDLが5.7±1.5から4.7±1.3 (nmol/mg LDL protein) に有意に低下した (p<0.001). Ox-LDLも2.39±1.00から1.54±1.03 (ng/μg LDL protein) と有意に低下した (P<0.001). sCD-14も6.4±1.1から5.4±0.9 (μg/mL) と有意に低下した (p<0.0001). これらの結果はET濃度が50EU/L以下の透析液であっても, マクロファージを刺激し, 酸化ストレスの要因となることを示している. これは低濃度のETであっても透析患者の動脈硬化および透析アミロイドーシスの増悪因子となりうる可能性を示唆するものである. 以上より, 末端透析液中ET濃度は治療モードのいかんを問わず可能な限り1.0EU/L以下を目標にすべきであると考えられた.

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