日本透析医学会雑誌
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小児腎移植前の下大静脈の評価
血管造影に代わるMR venographyの有用性
矢田 菜穂子中西 浩一上村 茂石倉 健司幡谷 浩史池田 昌弘本田 雅敬吉川 徳茂
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2003 年 36 巻 11 号 p. 1599-1603

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抄録
小児腎移植にあたって, レシピエントに移植腎静脈を吻合する下大静脈の血栓や閉塞があると移植術中に術式を変更することになり危険性を伴う. 安全に移植術を成功に導くためには術前に下大静脈の評価を行うことが重要である. 今回, レシピエントの腎移植前検査として下大静脈・腸骨静脈描出に対して従来から行われていた血管造影に代わるものとして, 非造影非侵襲的検査法であるMR venography (MRV) による検討を行った. 対象は3歳から14歳までの慢性腎不全にて腹膜透析または血液透析療法中の4例. 方法は2D time of flight (2D-TOF) 法MRVにて撮影し, 動脈からの信号を抑制するためsuperior presaturation pulseを併用し, 得られた画像にtarget maximum intensity projection処理を行った. 検査と画像処理にかかった時間は30分以内であった. 以上の方法により4例全例とも下大静脈と腸骨静脈を明瞭に描出できた. 2例は生体腎移植を施行して, 下大静脈, 腸骨静脈の手術所見がMRV所見と一致していることを確認した. MRVは下大静脈描出に対する非造影侵襲的腎移植前検査として有用である可能性が示唆された. また, 今後さらに症例を追加して検討する必要があるが, MRVは侵襲のある血管造影に代わるものとして信頼できる検査であると思われた.
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