日本透析医学会雑誌
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慢性維持透析患者の冠予備能と心筋局所運動速度の検討
力丸 伸樹大塚 容子貞松 研二車 忠雄金谷 庄蔵
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2003 年 36 巻 2 号 p. 125-129

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抄録

慢性維持透析患者においてフローワイヤーおよび組織ドップラー心エコーを用いて冠予備能および拡張早期波形を計測することにより心筋組織障害の有無を検討した. 対象は胸痛を主訴とするか心電図異常を指摘された非糖尿病慢性維持透析患者で冠動脈造影上有意狭窄を認めない7例. 男性4例女性3例, 平均年齢は64.8歳.
冠血流速度は, フローワイヤーを左冠動脈前下行枝7番および左冠動脈回旋枝13番に挿入し, 硝酸isosorbide (2mg) 冠注後の安静時冠血流速度を測定した. 冠予備能は, 安静時冠血流速度測定後にnicorandil (2mg) 冠動脈内注入後の反応性充血時冠血流速度を測定し, 安静時冠血流速度との比で求めた. 心臓カテーテル検査前に組織ドップラー心エコーを行い, 左室心尖部アプローチによる僧帽弁弁輪部での拡張早期波形を求めた.
今回のわれわれの症例における冠予備能は左冠動脈前下行枝では2.0±0.5, 回旋枝では2.0±0.3と低下していた. 拡張早期波形は9.6±2.0cm/sと低下していた.
以上より慢性維持透析患者には冠予備能低下と心筋組織障害を有する症例が存在することが示唆された.

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