2003 年 36 巻 3 号 p. 223-227
症例は70歳の男性で, 2000年4月に糖尿病性腎症による末期腎不全のため血液透析を導入し, 当院にて外来維持透析を施行していた. 2001年2月18日頃より家族の名前を忘れる, 理由もなく興奮するなどの精神症状が繰り返し出現し, さらに同年2月26日早朝より傾眠傾向を示したため, 同日当院を受診した. 血液検査にて血中アンモニア値は282μg/dLと高値を示し, 代謝性脳症が疑われたため同日緊急入院した. 腹部CT, 血管造影にて胃腎シャントを認め, 門脈大循環短絡による脳症と診断した. 保存的治療により精神神経症状は改善していたが, 血中アンモニア値は正常化しないため, バルーン下逆行性経静脈的塞栓術を施行した. 術後血中アンモニア値は正常化し, 現在1年5か月を経過しているが, 再発を認めず経過は良好である.