抄録
L鎖沈着症 (LCDD; light chain deposition disease) は, 単クローン性に産生増加した免疫グロブリンL鎖が全身諸臓器に沈着し, 臓器障害をもたらす比較的稀な疾患である. 今回われわれは, 多発性骨髄腫を伴わないLCDDの1症例を経験した. 患者は44歳の女性で, 急速に進行する腎機能障害と貧血のため, 入院した. 血液および尿中にIgG κ型のM蛋白を認め, 腎生検組織の蛍光抗体法検査によりκ light chainの沈着を糸球体係蹄, ボウマン嚢壁, 尿細管基底膜, 血管壁に認め, LCDDと診断した. 2クールの化学療法 (メルファランとプレドニゾロンの併用療法) を発症初期に施行した結果, 血中IgGおよびM蛋白は減少し, 腎機能障害の進展を一時的に食い止めることができた. 患者の同意がなかったため, 本症例への3度目以降の化学療法を継続できず, 約2年後に血液透析に導入となった. 発症早期のLCDD症例では, 化学療法が腎機能保護に効果的であると考えられ, 間歇的に化学療法を継続することが長期間の腎機能保持には重要であると考えられた.