日本透析医学会雑誌
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過去10年間の佐世保市立総合病院における維持透析患者に合併した尿路性器悪性腫瘍の臨床的検討
古川 正隆松尾 朋博東武 昇平林田 靖竹原 浩介津田 聡前田 兼徳岩崎 昌太郎齋藤 泰
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2004 年 37 巻 10 号 p. 1881-1886

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抄録

維持透析患者に, 悪性腫瘍の合併率が高いことが指摘されている. とりわけ尿路性器悪性腫瘍の合併率は高く, 今回われわれは過去10年間の当院における維持透析患者に発生した尿路性器悪性腫瘍について臨床的検討を加え報告する.
1993年1月から2002年12月までの10年間に当院で維持透析を施行された1,294例を対象とした. 対象症例中の総悪性腫瘍発生例数は145例 (11.2%) で, そのうち, 尿路性器悪性腫瘍発生例数は29例であり, 総悪性腫瘍に占める割合は20.0%であった. 尿路性器悪性腫瘍の内訳は腎細胞癌13例 (44.8%), 腎盂尿管腫瘍6例 (20.7%), 膀胱腫瘍8例 (27.6%), 前立腺癌2例 (6.9%) であった. 腫瘍発見の契機としては, 血尿, 尿道からの出血が14例 (48.2%) と最も多く, 次いでCT, 超音波検査などによるスクリーニングが11例 (37.8%) で, 以下腹痛, 排尿困難, 尿細胞診陽性, PSA高値が1例ずつであった. 腫瘍発見時の年齢に関しては腎細胞癌では平均60歳, 腎盂尿管腫瘍, 膀胱腫瘍などの尿路上皮腫瘍では平均73歳と尿路上皮腫瘍で高い傾向がみられた. また, 腫瘍発生までの透析期間についてはACDK (acquired cystic disease of the kidney) に発生した腎細胞癌で長い傾向がみられた他は特に所見は得られなかった.
Matas以来, 維持透析患者に悪性腫瘍が多発していると国内外より報告されているが, とりわけ尿路性器系悪性腫瘍の合併率は高い. 尿路系悪性腫瘍は血尿で発見される症例が多く自尿のほとんどない透析患者は発見が遅れる傾向にあるものと予想される. 今回の検討でも進行癌の症例が多く, 末期腎不全および維持透析患者では尿路の悪性腫瘍の合併も常に念頭におき自尿のある患者では尿検査, 尿細胞診検査を自尿のない患者では膀胱洗浄尿細胞診検査や超音波検査によるスクリーニングを積極的に行うべきであると考えた.

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