日本透析医学会雑誌
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急速な転帰をとった腎紡錘細胞癌の1例
布川 朋也新谷 晃理中西 良一山中 正人小島 圭二川西 泰夫沼田 明荻野 哲朗
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2004 年 37 巻 12 号 p. 2083-2087

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抄録

患者は糖尿病性腎症による慢性腎不全のために, 2年間の透析歴を有する50歳の男性. 食欲不振と全身倦怠感が持続し, 胸部X線検査で胸水貯留を認めたために検査の目的で入院となった. 入院後に胸水は急速に増加し, 腹水の貯留も認めるようになった. 試験穿刺で得られた胸水の性状は血性で, 細胞診はclass Vであった. 原発巣の検索を行ったが, 診断が確定しないまま, 全身状態が急速に悪化して第30入院病日に永眠された.
剖検で肝弯部の結腸間膜に最大径15cmの腫瘍を認めた. また, 腫瘍結節を肝, 右腎上極, 右副腎, 左肺上葉, 甲状腺に認めた. 腸間膜および壁側腹膜にもびまん性に腫瘍播種がみられ, 癌性腹膜炎の状態であった. 肉眼的に原発臓器を特定することはできなかったが, 癌性腹膜炎が直接死因と考えられた. 剖検病理組織学的検査により右腎から発生した紡錘細胞癌と診断された.
透析患者では腎癌の発生頻度が高く, 早期発見のために定期的な検査が施行されており, 十分な成果をあげている. しかし, 紡錘細胞腎癌はCTによる通常のスクリーニングでは発見は困難であると考えられる. スクリーニングの方法, 治療方針の決定のためには今後のデータの蓄積が必要であると思われる.

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