日本透析医学会雑誌
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たこつぼ型心筋障害を合併し集学的治療にて救命しえた急性腎不全の1例
杉本 俊郎出路 奈緒子磯野 元秀久米 真司大澤 紀之金崎 啓造荒木 信一一色 啓二川添 智道岡田 裕作古家 大祐
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2004 年 37 巻 12 号 p. 2093-2098

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抄録

症例は, 53歳女性. 胆石治療の目的にて近医入院中, 発熱とともに血圧低下が出現し, 無尿状態となった. 血液検査にてs-Cre 7.7mg/dL, BUN 67mg/dL, CRP 28.2mg/dLであり, 敗血症に伴った急性腎不全と診断され, 当院に紹介, 集中治療室 (ICU) に入院となった. 入院時, 心電図にて, V1-V3にQSパターンとSTの上昇, 心エコーにて左室壁運動低下, および心筋逸脱酵素の上昇を認めたため, 心筋梗塞の発症を疑い心臓血管カテーテル検査を施行した. 冠動脈には病変なく, 左室造影にて, 心尖部の壁運動低下と心基部の過剰収縮を認めたため, たこつぼ型心筋障害と診断した. 入院後抗菌薬の投与, エンドトキシン吸着, 持続的血液濾過透析による集学的治療に反応し, 全身状態と検査所見の異常は改善し, 入院第7病日にはICUを退室し, 血液透析 (HD) に移行することができた. 第13病日から利尿がみられ, 第25病日にはHDから離脱することができた. 退院前には, 心電図, 心エコー所見は正常化した. 本症例は, 敗血症・急性腎不全がストレスとなり, たこつぼ型心筋障害を発症したと考えられ, 急性腎不全の合併症として, 今後本症候群の発症に注意すべきである.

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