日本透析医学会雑誌
Online ISSN : 1883-082X
Print ISSN : 1340-3451
ISSN-L : 1340-3451
巨大な腫瘤状石灰化に対して副甲状腺全摘出術+筋肉内自家移植術 (total parathyroidectomy+autotransplantation: PTx-AT) が有効であった糖尿病透析患者の1例
山本 貴敏澁谷 浩二西岡 正登新光 聡子尾藤 良子土橋 正樹黒田 達実藤田 嘉一
著者情報
ジャーナル フリー

2004 年 37 巻 8 号 p. 1645-1650

詳細
抄録

症例は60歳女性, 1995年より糖尿病性腎症による末期腎不全のため他院で維持血液透析を受けていた. 血液透析導入直後より血清Ca, P値の管理に難渋し, 炭酸カルシウム製剤を中心に血清Ca, P値を管理されていた. 2000年2月, 右腸骨周囲の腫瘤を自覚, 単純レントゲン写真にて右腸骨部と大腿骨部の筋肉内および筋肉間隙に巨大な腫瘤状石灰化を認めた. その後次第に右股関節痛が生じ, ついには歩行困難をきたした. 血清Ca値10.0mg/dL, 血清P値8.3mg/dL, i-PTH値1,200pg/mL, オステオカルシン値450ng/mL, 頸部超音波検査にて4腺ともに腫大した副甲状腺を認めたため, 副甲状腺全摘出術+筋肉内自家移植術 (total parathyroidectomy+autotransplantation: 以下PTx-ATと略す) の目的で, 2000年4月7日当院に入院し, 4月12日PTx-ATを施行した. PTx-AT術直後より疼痛は軽減し, 歩行可能となった. 術後3か月で腫瘤状石灰化は縮小し, さらに術後1年後には腫瘤状石灰化はほぼ消失し, 現在に至るまで再発をみていない. 二次性副甲状腺機能亢進症の治療には内科的治療と外科的治療があるが, 漫然とした内科的治療の継続は異所性石灰化の誘因となる. 内科的治療の限界を見極め, PTx-ATの時期を逸さないことが重要と考えられ, 極めて臨床的示唆に富む症例として報告する.

著者関連情報
© 社団法人 日本透析医学会
前の記事 次の記事
feedback
Top