日本透析医学会雑誌
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壊死性膀胱炎を発症した糖尿病透析患者の1例
木下 千春井上 賀元神田 千秋藤田 葉子武下 清隆小西 憲子
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2005 年 38 巻 12 号 p. 1787-1791

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抄録

透析歴4年の73歳の女性が糖尿病性壊疽にて下肢切断のために当院に転入院した. 手術中血圧が一時的に50/20mmHgまで低下した. 術後5日目, 発熱, 下腹部痛, 尿意の訴えがあり, CRP 30.2mg/dL, 白血球数11,600/μLを呈した. 翌日意識障害, 腹部膨隆が出現し, 腹部X線にて著明な小腸ガス像を認め, 麻痺性イレウスが疑われた. その後, 腹痛が増強し, 敗血症性ショックを呈し永眠した. 剖検の結果, 膀胱穿孔を伴う壊死性膀胱炎, 汎発性腹膜炎と病理診断された. 膀胱壁に抗β2MG抗体陽性のアミロイド沈着が認められたが, 軽度であった. 本症例では動脈硬化, 術中の血圧低下, 糖尿病性神経因性膀胱による膀胱壁の過伸展が認められ, これらにより惹き起こされた膀胱壁の虚血が壊死性膀胱炎の発症要因のひとつと考えられる. さらに, 透析患者特有の易感染性や神経因性膀胱や無尿が原因となって難治性となった慢性尿路感染も壊死性膀胱炎の発症に寄与したものと思われる.

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