日本透析医学会雑誌
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血液透析患者の動脈壁硬化と心臓・血管の形態変化との関連性
渡辺 幸康斉藤 浩次矢野 新太郎清水 幸博小野 久米夫野島 美久
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キーワード: 血液透析, 動脈硬化
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2005 年 38 巻 6 号 p. 1305-1314

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抄録

本態性高血圧患者の大動脈・頸動脈などの弾性血管 (elastic artery) の肥厚が左室肥大と正の相関関係にあると報告されているが, この仮説が血液透析患者においてもあてはまるか否かは明らかにされていない. 今回われわれは年齢・性別・喫煙歴・糖尿病・虚血性心疾患をマッチさせた血液透析患者 (HD群): 140例, 血清クレアチニン値が正常な非血液透析患者 (non HD群): 142例について, 心エコー, 総頸動脈エコー, および日本コーリン社製フォルムPWV/ABIを施行し, 動脈硬化に伴う心臓および血管の形態的変化について検討した.
HD群ではnon HD群にくらべて, 心エコーで, 心重量係数 (LVMI), 左室収縮末期径 (LVDs), 左室拡張末期径 (LVDd), 左室収縮末期容積 (LVESV), 左室拡張末期容積 (LVEDV) は有意に大きく (それぞれ, p<0.0001, p<0.0001, p<0.0001, p=0.001), 総頸動脈エコーで, 最大内膜中膜複合体 (Max-IMT), 頸動脈収縮期内径 (CADs), 頸動脈拡張末期内径 (CADd), 血管腔横断面積 (LCSA) は有意に大きかった (それぞれ, p<0.05, p<0.0001, p<0.0001, p=0.0005). また, HD群で収縮期血圧 (SBP) と脈圧 (PP) は左心室相対的壁肥厚度 (LVRWT) と有意に正の相関を示し (それぞれ, p<0.05, p<0.0005), 拡張期血圧 (DBP) は総頸動脈Max-IMT, 総頸動脈血管壁横断面積 (IMCSA/BSA), 収縮期内膜中膜複合体 (IMTs), 拡張期内膜中膜複合体 (IMTd) と有意に負の相関を示し (それぞれ, p<0.005, p<0.05, p<0.01, p<0.01), PPはMax-IMTと有意に正の相関を示した (p<0.05). HD群における単回帰分析において, LVMIとCADs・CADd・LCSA・IMCSA/BSA; LVRWTとMax-IMT・IMCSA/BSA; LVDdとCADs・CADd; LVEDVとCADs・CADd・LCSA; 上腕足首脈波伝播速度 (baPWV) とMax-IMT・CADs・CADd・LCSAはそれぞれ, 有意に正の相関を示していた. また, HD群におけるLVMIを従属変数とした重回帰分析において, 年齢・性別・体格・透析期間・喫煙歴・DMの有無・SBP・PPによる影響を除外しても, 総頸動脈IMCSA/BSAは有意な独立した正の相関因子であった.
Elastic arteryの肥厚に伴い, 心肥大が進行するという仮説は血液透析患者においても適応できることが判明した.

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