日本透析医学会雑誌
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尺側内シャントのPTAによる管理と治療成績
宮川 尚之久保田 和義荒瀬 勉井上 彰清水 喜徳伊藤 洋二草野 満夫
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2006 年 39 巻 10 号 p. 1475-1480

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抄録

2005年9月に日本透析医学会からバスキュラーアクセスに関するガイドラインが作成された. 以前からわれわれは, その提書の趣旨に沿った慢性血液透析用のバスキュラーアクセスを作製してきている. 今回, 前腕から肘部に移行する前の尺側内シャントの位置づけについて, その開存成績およびその管理について検討を行った. 1995年1月から2004年12月までの観察期間, 当院で作製した前腕部内シャント167件, 115症例を対象とし, 作製部位により内シャントを尺側群 (U群: ulnobasilic arteriovenous fistula)・橈側群 (R群: radiocephalic arteriovenous fistula) の2群に分類し, 年齢, 透析歴, 累積開存率, 経皮的血管形成術 (PTA) による治療成績の検討を行った. 透析歴はU群で長かった. 年齢はU群でやや高い傾向を示したが統計学的有意差を認めなかった. この2群間の累積開存率は1次・2次ともにU群で劣っていた. 全症例中86件, 73症例がPTAにて開存期間を延長できた症例であった. それらをPTA症例とし, これらについても全症例と同様に尺側群 (U' 群)・橈側群 (R' 群) の2群に副分類し検討を行った. PTA症例の2次累積開存率の検討ではU' 群がR' 群より劣るものの統計学的有意差を認めない結果となった. PTA施行状況については, PTA回数と2次累積開存率に両群とも1次回帰直線の相関があった. その係数から割り出されるPTA頻度は, U' 群で2.55か月/回, R' 群で3.28か月/回であった. 尺側内シャントは橈側に比べ短い間隔でPTAを施行しており, U' 群の累積開存率を延長するために, より多くのPTAを要していた. 尺側内シャントは橈側に比べ作製した時点での平均年齢がやや高く, 平均透析歴が長いため, 解剖学的理由だけでなく開存成績が不良となる. しかし, 繰り返しPTAを施行することで, 尺側内シャントも橈側と同様の開存成績が得られていた. 以上の結果をふまえ, われわれは肘部内シャントへの移行に先立ち尺側内シャントを作製することを推奨する.

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