透析患者の長期生命予後に及ぼす因子を検討するために, 透析患者52人において透析前に血圧, 心胸比, 血清アルブミン, 心房性ナトリウム利尿ペプチド (ANP), 脳性ナトリウム利尿ペプチド (BNP), 血漿レニン活性 (PRA), 血漿ノルアドレナリン濃度 (PNA) を測定した. 患者は測定の中央値で高低2群に分けてKaplan-Meier (KM) 生存曲線を求めLogrank法で検定した. 生存期間に及ぼす因子の解析は各項目値を説明変数としてCox比例hazard法で行った. いずれもp<0.05を有意とした. 13年間で41人が死亡し, うち38人が病死であった. KM生存曲線は高年齢群 (p<0.001), 低血清アルブミン群 (p=0.008), 高BNP群 (p<0.001) で有意に生存期間が短いが, 透析期間, 収縮期血圧, 心胸比, ANP, PRA, PNAでは高低2群間に有意差を認めなかった. Cox比例hazard法による単変量解析では年齢 (p<0.001), 心胸比 (p=0.010), 血清アルブミン (p<0.001), BNP (p=0.011) が生命予後の有意なリスク因子となり, 多変量解析を行うとp値は年齢p<0.001, 心胸比p=0.816, 血清アルブミンp=0.020, BNPp=0.062となり, 年齢と血清アルブミンのみが生命予後の独立したリスク因子であることが示された. 以上より透析患者のBNP値は生命予後の独立したリスク因子とはいえなかったがリスク因子として年齢, 血清アルブミン値に次いで重要であることが証明された. 透析前のANP値は生命予後に関与しなかった.
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