抄録
心臓に器質的心疾患をもたない不整脈を特発性とすると,遺伝性不整脈はどのように扱うべきかが問題になる.また逆に器質的心疾患を有していても,例えば先天性QT延長症候群を合併する場合もある.Primary electrical diseasesとよばれるものの多くに遺伝子異常の関与が知られてきたが,Brugada症候群発症例においてはいまだ遺伝子異常が確認される頻度は限られており,特発性の代表とみなされることが多い.Brugada症候群は特徴的な心電図所見を呈するが,Brugada症候群の特徴を示さない心室細動例も実際に経験される.いずれもQRS終末部のノッチまたはJ波とST変化が強調されるため,早期再分極に共通の所見とみなすこともできる.これらの現象は健常人でもしばしば認められるが,心電図所見の成因とその意義,および心室細動に移行する機序の多くはいまだ不明であり,今後究明すべき課題といえる.