抄録
症例は72歳女性,9年来の発作性心房細動.2007年3月カテーテルアブレーションを施行されたが心房細動が再発したため,同年12月に2回目のアブレーションを施行し,再度左右の上下肺静脈を電気的隔離した.その後,心房細動発作は消失したが,2008年3月に,心房頻拍が発作性に出現するようになったため,同年4月に3回目のアブレーションを施行した.無投薬下では右下肺静脈のみに伝導再開を認め,イソプロテレノールおよびアデノシン三リン酸(ATP)の静注時のみ右上肺静脈に一過性の伝導再開を認めた.臨床的に認められた心房頻拍は右肺静脈起源と考えられ,再度右上下肺静脈を電気的隔離した.最終的にイソプロテレノールおよびATP静注でも右上肺静脈左房間の伝導を認めなくなり,その後不整脈の再発なく経過している.前回のアブレーションから4ヵ月後,ATP静注時にのみ右上肺静脈左房間の伝導を認め,それが臨床的な心房頻拍の原因となっていた.慢性期にもATPによって伝導が再開する機能性ブロックが起こりうること,ブロックの確認にATPが重要であることが示唆された.