2011 年 31 巻 3 号 p. 325-328
心臓電気生理・不整脈の研究は,従来ヒト以外の生物種の心筋細胞を用いるか,ヒトイオンチャネル遺伝子を心筋以外の細胞株に異所性に発現させて行われてきたが,これらの方法はヒト心筋細胞とは異なる環境下での検討であるということが課題として指摘されていた.ヒトiPS細胞から分化誘導した心筋細胞の樹立により,この問題の克服が期待されている.今回,ヒトiPS細胞から分化誘導した心筋細胞の電気生理学的特性を検討した.ヒト心筋型イオンチャネルmRNAの発現,ヒト心筋型イオン電流記録,自律神経応答,イオンチャネルブロッカーの作用などが確認された.ヒトiPS細胞から分化誘導した心筋様細胞は心筋細胞に近い特性が獲得されているが,結節型,心房筋型,心室筋型が混在すると考えられた.