抄録
【背景】我が国の心房細動(AF)患者数は増加傾向にあり,有病率は0.6~0.8%程度といわれる.われわれは人口28万人余を擁する京都市伏見区にて,AF患者の全例登録を目指す伏見心房細動患者登録研究を2011年3月より開始し,2012年8月末現在,すでに人口の1%を超える3,277例を登録した.AF患者の心原性脳塞栓予防を目的とした抗凝固療法には,長い間ワルファリンが使われてきたが,新規抗凝固薬が登場して治療法の変革が期待されている.【結果】登録時データを解析したところ,抗凝固薬は1,668例(50.9%)に,ワルファリンは1,596例(48.7%)に投与されていた.新規抗凝固薬のダビガトランは,大半の症例が本剤発売前に登録されたため,72例(2.2%)にとどまった.抗血小板薬は983例(30.0%)に処方され,うちアスピリンが849例(25.9%)であった.ワルファリン処方率は,CHADS2スコアの上昇とともに増える傾向が見られたが,スコア0点でも30.8%に投与されており,スコア4点以上でも59.0%にとどまっていた.アスピリンはどのスコア階層においても20~30%に処方されていた.ワルファリン処方率は年齢とともに上昇するが,80歳を超えるとむしろ低下し,また発作性に比べて永続性症例で処方率は高かった(発作性34.2%,永続性62.0%).CHADS2スコア構成要素のうちでは,心不全と脳卒中が存在するとワルファリン処方率が高く,逆に高年齢,高血圧,糖尿病で低い傾向が見られた.【結論】実臨床の現場において,AF患者に対するワルファリン処方率は低く,適正に使用されているとはいいがたい.今後,新規抗凝固薬の登場による処方動向の変化を追跡していきたい.