抄録
交感神経興奮は器質的心疾患症例の心室不整脈に対する催不整脈効果を有し,迷走神経興奮は抗不整脈作用を示すと考えられる.自律神経興奮はその強度のみならず,交感神経興奮と迷走神経興奮のバランス,変動のダイナミクスも不整脈発症に影響を及ぼす.日常診療では,器質的心疾患を有する心室不整脈に,心機能と不整脈の両面からβ遮断薬が用いられるとともに,β遮断薬作用を併せもつIII群抗不整脈薬が処方されている.繰り返し生じる心室頻拍によりelectrical stormに陥った場合,自律神経は重要な治療介入ポイントとなる.初期治療では鎮痛・鎮静・麻酔とともにβ遮断薬が用いられるが,重症例では短期作用型β遮断薬静注,さらには心臓交感神経のブロック・切除,腎動脈カテーテルアブレーション,硬膜外ブロックなどの非薬物治療が用いられる場合があり,交感神経興奮抑制を介した一定の治療効果が期待できる.