抄録
心房細動(AF)の病態発現には,遺伝的因子が思った以上に強く関与している.最近のゲノム研究,全ゲノム関連解析(genome-wide association study : GWAS),では10を超えるAF感受性1塩基多型(single nucleotide polymorphism : SNP)が同定された.AF発症と強く関連する1つのSNPとAF発症と中等度に関連する複数のSNPsである.AFと強く関連する4q25のSNPは,肺静脈心筋スリーブの発生とかかわることが報告されているPitx2を最近傍遺伝子としてもち,AFのトリガーとの関連が示唆される.一方,AFと中等度に関連する複数のSNPsの一部は心房リモデリング,AFの維持機構との関連が示唆される.そのうち,発作性AFに比べて慢性AFで特に強く関連するSNPsがAFの慢性化に関連することが示唆されるが,これまでの自験例・他験例ではそのようなSNPsは同定されていない.したがって,現時点では,AF発症と関連する遺伝因子は同定されたが,その慢性化に関する遺伝因子は同定されていない.