2017 年 37 巻 1 号 p. 23-30
症例は27歳の男性.睡眠中の頭痛と胸痛を訴えて救急外来を受診した.失神症状はなく,不整脈の既往や突然死の家族歴もなかった.12誘導心電図検査で右側胸部誘導にcovedタイプのST上昇(type 1 ECG)と,下壁誘導(II,III,aVF)に明瞭なJ波を認めたが,器質的心疾患は否定的であった.1ヵ月後に心静止を生じ,蘇生処置に反応なく死亡した.病理解剖では,両心室の厚さの不均一性,軽度の心筋肥大,左室前壁と下壁,右室心尖部および右室流出路周囲の心外膜側に脂肪変性を認め,血管周囲を架橋するような心筋束が確認された.また,右室流出路に近い心外膜に多核白血球を含む炎症細胞浸潤が見られ,これらの所見はBrugada症候群の病理組織像として矛盾しないものと考えた.