心電図
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症例
房室結節遅伝導路のleftward extensionにより,左房後壁副伝導路を介した房室回帰性頻拍に対する副伝導路離断の評価に難渋した1例
磯 一貴永嶋 孝一奧村 恭男渡辺 一郎高橋 啓子新井 将渡邉 隆大黒川 早矢香大久保 公恵中井 俊子平山 篤志
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2017 年 37 巻 3 号 p. 172-179

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抄録

症例は45歳,男性.2002年,他院で左側の副伝導路を介した房室回帰性頻拍(AVRT)に対してアブレーションを施行した.2016年にlong RP’頻拍を認めたため,当院受診.心室ペーシング下の心房最早期興奮部位は左房後壁であり,カテーテル刺激で誘発された頻拍(頻拍周期 : 344msec)中も,心房の興奮伝播様式は同様であった.頻拍中の室房(VA)伝導時間は142msecであり,右室心尖部からのエントレインメントペーシングでは,VAVパターンを示し,PPI(Post Pacing Interval)-TCL(Tachycardia CL)=108msec,SA(Stimulus-Atrial)-VA=82msecであったが,エントレインメント中にanterograde His captureを認めたため,左房後壁副伝導路を介した正方向性AVRTと診断した.経中隔的左房アプローチを用いて心室ペーシング下に,弁上の心房最早期興奮部位を通電したところ,VA伝導時間のわずかな延長を認めたが,心房興奮伝播には変化を認めなかった.心室ペーシング下にアデノシン三リン酸(ATP)を投与したところ,VA伝導は消失し,また傍ヒス束ペーシングでも房室結節パターンであったため,副伝導路は離断されており,房室結節遅伝導路のleftward extensionによる室房伝導と判断した.本症例は,左房後壁副伝導路と房室結節のleftward extensionの位置が近接していたため,副伝導路の離断の評価に難渋した.左房後壁副伝導路へのアブレーションに難渋した際,房室結節遅伝導路のleftward extensionの存在を念頭に置く必要がある.

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