2019 年 39 巻 4 号 p. 247-260
QRS内に発生する高周波成分に関しては,いまだその発生原因や臨床的意義が確立されたとは言い難く,現在においても心電図情報のmysterious subjectsの一つである.QRS区間内に発生する高周波信号は,さまざまな病態におけるミリメーターレベルの脱分極異常についての情報を含んでいる可能性があり,高周波解析により新たな非視覚的心電情報がもたらされることが期待される.筆者は2000年頃より心電図学者としての立場から,QRS波の周波数解析の問題に取り組んできた.そこで,今後この方面に興味がある心電図研究者のために,周波数解析に関する総説を書くことを企図した.本稿では,近年,フーリエ変換法に代わる周波数解析法として期待されているウェーブレット変換法の応用を中心として,①周波数解析の歴史,②ウェーブレット変換の臨床応用,③高周波発生機序解明の一手段としてcomputer simulationの応用,という三つのテーマを概説する.