2019 年 39 巻 4 号 p. 261-272
心筋の主要なナトリウムチャネルの遺伝子であるSCN5Aの変異は種々の不整脈の原因となる.SCN5Aの発現量の変化が不整脈基盤形成に関与する可能性があるが,SCN5Aのプロモーター領域や調節領域のvariantが不整脈発症に関与するのかは不明であった.今回われわれは,種々の不整脈症例1298例に対し,SCN5Aのプロモーター領域と調節領域の遺伝子解析を行い,29例に26種類の新規のSCN5Aプロモーターのrare variantを同定した1).クロマチン免疫沈降シークエンスのデータと,今回同定されたvariantを比較すると,多数のrare variantは転写因子結合部位に位置していた.ルシフェラーゼレポーターアッセイを用いて機能解析を行った結果,rare variantは野生型に比しプロモーター活性が低下していた.また,イントロン1に存在する調節領域内に,心房細動と関連するvariantを同定した.以上の結果より,SCN5Aの転写量の変化が種々の不整脈発症に関与する可能性が示唆された.