心電図
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総説
肥大型心筋症患者におけるI度房室ブロックの予後指標としての臨床的意義
樋口 諭南 雄一郎庄田 守男萩原 誠久
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2021 年 41 巻 2 号 p. 64-73

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抄録

近年,12誘導心電図におけるI度房室ブロックは,心房細動新規発症,心不全入院,また死亡率上昇などの,心血管イベント発生に影響しうる重要な所見として注目されている.本研究では,I度房室ブロックが肥大型心筋症(HCM)患者の心血管イベント発生リスクとなりうるかを検証した.対象は414人のHCM患者(平均年齢51±16歳,男性64.5%).初回評価時に測定されたPR時間をもとにI度房室ブロック(PR時間200ms以上)群(96人,23.2%)と非I度房室ブロック群(318人,76.8%)に分類した.エンドポイントはHCM関連死とし,突然死または致死性不整脈イベント,心不全関連死,脳卒中関連死による複合エンドポイントと定義した.中央値8.8(4.9-12.9)年のフォローアップ中,計56人(13.5%)の患者でHCM関連死が発生し,なかでも47人(11.4%)は突然死または致死性不整脈イベントの複合エンドポイントであった.I度房室ブロックとHCM関連死のリスク因子による多変量解析では,I度房室ブロックはHCM関連死の独立した予後予測因子〔adjusted hazard ratio(adjusted HR):2.41,95%confidence interval(95%CI):1.27-4.58,p=0.007〕であることが示され,さらにこの傾向は突然死または致死性不整脈による複合エンドポイントのみでも維持された(adjusted HR:2.60,95%CI:1.28-5.27,p=0.008).以上の結果より,I度房室ブロックは,HCM患者における突然死または致死性不整脈による複合エンドポイントも含む,HCM関連死発生に関与している可能性が示唆された.

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© 2008, Japan Science and Technology Agency
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