心電図
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症例
交代性脚ブロックを呈したKearns-Sayre症候群の1症例:ヒス束内triple pathway縦解離による考察
佐藤 工加藤 孝和金城 学今 清覚高田 博仁
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2023 年 43 巻 3 号 p. 143-152

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抄録

Kearns-Sayre症候群(以下,KSS)は進行性外眼筋麻痺,網膜色素変性,心伝導ブロックを3主徴とする予後不良の疾患である.症例は現在27歳,KSSの男性である.19歳時にとられた心電図において,初めに洞調律,左軸偏位−70°,PR間隔0.16秒,QRS幅0.16秒で,完全右脚ブロック型【A】を示し,その数十秒後に左軸偏位−60°,PR時間0.15秒,QRS幅0.15秒の完全左脚ブロック型【B】を示す狭義の交代性脚ブロックを認めた.さらには,26歳時の心電図で,QRS軸±0°と先のA,Bより右方に偏位し,PR時間0.22秒,QRS幅0.15秒で,V1誘導はrSr’型で右脚ブロック型に近似しているが,V5,V6誘導にS波を認めない非特異的心室内伝導障害と考えられる波形【C】を認めた.【A】,【B】のみならず,【C】のQRS軸シフトを考慮すると,左右脚の伝導性の差のみでは説明困難であり,われわれはヒス束内縦解離による解析を行い,ヒス束内triple pathway縦解離がこれらの心電図変化の機序と考えられた.多彩な伝導障害を示すKSS症例の中で,われわれが知る限り,従来報告されていない所見と考えられたので報告する.

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© 2008, Japan Science and Technology Agency
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