心電図
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43 巻, 3 号
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Editorial
症例
  • 佐藤 工, 加藤 孝和, 金城 学, 今 清覚, 高田 博仁
    2023 年 43 巻 3 号 p. 143-152
    発行日: 2023/10/31
    公開日: 2023/11/03
    ジャーナル フリー

    Kearns-Sayre症候群(以下,KSS)は進行性外眼筋麻痺,網膜色素変性,心伝導ブロックを3主徴とする予後不良の疾患である.症例は現在27歳,KSSの男性である.19歳時にとられた心電図において,初めに洞調律,左軸偏位−70°,PR間隔0.16秒,QRS幅0.16秒で,完全右脚ブロック型【A】を示し,その数十秒後に左軸偏位−60°,PR時間0.15秒,QRS幅0.15秒の完全左脚ブロック型【B】を示す狭義の交代性脚ブロックを認めた.さらには,26歳時の心電図で,QRS軸±0°と先のA,Bより右方に偏位し,PR時間0.22秒,QRS幅0.15秒で,V1誘導はrSr’型で右脚ブロック型に近似しているが,V5,V6誘導にS波を認めない非特異的心室内伝導障害と考えられる波形【C】を認めた.【A】,【B】のみならず,【C】のQRS軸シフトを考慮すると,左右脚の伝導性の差のみでは説明困難であり,われわれはヒス束内縦解離による解析を行い,ヒス束内triple pathway縦解離がこれらの心電図変化の機序と考えられた.多彩な伝導障害を示すKSS症例の中で,われわれが知る限り,従来報告されていない所見と考えられたので報告する.

  • 本橋 宜和, 鈴木 昌代, 高山 仁美, 野村 悠文, 宮村 昌利, 森本 大成, 星賀 正明, 勝間田 敬弘
    2023 年 43 巻 3 号 p. 153-157
    発行日: 2023/10/31
    公開日: 2023/11/03
    ジャーナル フリー

    ペースメーカ植込み時の合併症として,静脈穿刺時の気胸やリード挿入時の心血管損傷などが報告されている.その中で,心穿孔の発生率は約1%程度と稀であるが,心タンポナーデや死亡に至る可能性がある重篤な合併症である.症例は70歳,女性.スクリューインリードを用いたペースメーカ植込み術後11日目の胸部CTで,右肺尖部ブラおよび右気胸を認めた.さらに,心房ペーシング閾値の上昇と心嚢液貯留を認めたため,リード穿孔による気胸も疑われた.右気胸に対する呼吸器外科手術の際,胸腔鏡下にスクリューインリード先端の右房壁貫通と,同部位に接する心膜と胸膜に直径約3mmの穿孔を認め,隣接する右肺中葉に損傷を認めた.このため,未破裂ブラ切除および損傷肺の修復とリード抜去を行った.閾値や心内波高値などの変化と,リード留置部の隣接臓器で異常を認めた場合は,リード穿孔を疑い,穿孔があれば積極的にリード抜去を検討する必要があると考える.

Communication
  • 菊池 昂貴, 山口 峰, 棟方 栄子, 奧村 謙, 石田 祐司, 富田 泰史
    2023 年 43 巻 3 号 p. 158-164
    発行日: 2023/10/31
    公開日: 2023/11/03
    ジャーナル フリー

    心電図モニターアラームのインシデントには,“無駄鳴り”が関与している.心電図モニターの適正かつ効率的な運用方法を検討するため,弘前大学医学部附属病院循環器病棟(定床46)におけるアラーム作動の現状を把握し,アラーム設定変更による介入効果を検証した.アラーム設定変更前後で,看護師がアラームを解除した回数とアラーム作動原因(外れ,ノイズ,その他)を連続3日間調査した.設定変更前は,1日平均29人の患者に心電図モニターが装着され,1日平均551回のアラーム解除が行われた.アラームの原因として「その他」の割合が高く(79%),その内訳は「無呼吸」と「RUN」の占める割合が多かった.「無呼吸」をOFFとし,「RUN」については「4拍,30拍以上/分」から「6拍,40拍以上/分」に変更した.設定変更後は,1日平均31人の患者に心電図モニターが装着され,アラームの解除は1日平均79回に減少した.適切なアラーム設定により“無駄鳴り”が減少し,病棟の安全管理が推進されることが示唆された.

  • 松島 和海, 小曽根 龍志, 寺島 俊太, 荻沼 明美
    2023 年 43 巻 3 号 p. 165-169
    発行日: 2023/10/31
    公開日: 2023/11/03
    ジャーナル フリー

    【目的】本研究の目的は,高周波カテーテル心筋焼灼術(以下,RFCA)中の患者の苦痛に対し,その種類と頻度を明らかにすることで,適切な看護を提供するための示唆を得ることである.【方法】2018年1月から2019年12月に,群馬大学医学部附属病院血管造影室において施行されたRFCA施行総数176例のうち,非鎮静下で実施された80症例の看護記録を振り返り,RFCA中の患者の苦痛を分類し,頻度を集計した.【結果】苦痛の種類と頻度は,穿刺部痛によるもの56例,頻脈誘発によるもの45例,高周波通電によるもの40例,同一体位によるもの32例,合併症によるもの4例,その他16例であった.【考察・結論】本研究での調査で多かった穿刺部痛,頻脈誘発関連症状,高周波通電関連症状は治療上不可欠な行為であり,看護師の直接的,かつ物理的な介入は難しいと考えられる.しかしながら,今回の調査により,苦痛がどのような時に惹起されるのかを予測できるようになった.苦痛の発生を予測し患者に事前に説明することで,心の準備をさせ,訴えを表出しやすい環境を作ることで,直接的な看護行為につながり苦痛の軽減に寄与することがわかった.

連載 今さら聞けない心電図波形塾
  • 村田 広茂, 清水 渉
    2023 年 43 巻 3 号 p. 170-175
    発行日: 2023/10/31
    公開日: 2023/11/03
    ジャーナル フリー

    心電図のT波は,P波―QRS波に続く第三の主要な波であり,心臓の電気的興奮からの回復(再分極)過程を表す波形である.T波を評価する際には,まず正常なT波の極性や振幅の基準値を理解しておく必要がある.次に,異常T波の形状を大まかに3パターンに分けて,つまり,高いT波,平低T波,陰性T波と,それぞれ心電図診断をする.さらに,二相性,二峰性(ノッチ型)などの幅の形態変化を考慮して,それぞれ特徴的な病態や疾患との関わりを理解し,鑑別診断することが大切である.高いT波として重要なのは,高カリウム血症に特徴的なテント状T波と,心筋梗塞超急性期のみに出現する超急性期T波(Hyper acute T wave)である.陰性T波のうち虚血性心疾患に関与するものが重要であり,心筋梗塞の亜急性期から再灌流後に出現する冠性T波(Coronary T wave),一過性の心筋虚血を反映し重度冠動脈疾患を示唆する陰性もしくは二相性T波(Wellens症候群)などがある.心肥大を示唆する,ストレイン型ST-T変化や心尖部肥大型心筋症などに見られる巨大陰性T波(Giant negative T wave)など,各疾患に特徴的なT波も報告されている.また,先天性QT延長症候群の遺伝子型ごとに特徴的なT波や,Brugada症候群のJ点(ST)上昇から引き続く陰性T波など,診断に直結する重要なT波もある.このように,正常なT波の形状とその成因を理解したうえで,臨床上重要な病態・疾患を中心にT波の異常との関係を総合的に理解することが重要である.

研究会レポート
特別寄稿
エキスパートコンセンサスステートメント
心電学フロンティア2022(第56回理論心電図研究会)「心電図の基礎の基礎:心電図を1から学び直すために」より
  • 當瀬 規嗣, 佐藤 達也
    2023 年 43 巻 3 号 p. 201-205
    発行日: 2023/10/31
    公開日: 2023/11/03
    ジャーナル フリー

    心電図は心臓の電気現象を体表面電極により測定したものである.その信号が微弱なものであるので,活動によって生じた電位変化を感知する増幅器を使用する.心臓の興奮は,興奮伝導系をたどるが,その様子が心電図のPQRST波として表わされる.その測定原理は,脱分極が近づくと陽性の電位変化となり,脱分極が遠ざかると陰性の電位変化となる.加えて,再分極が遠ざかると,やはり陽性の電位変化となる.こうして,T波は通常陽性に振れることになる.その原因は心室筋の活動電位幅が,内膜側で長く,外膜側で短くなっていることである.ラットやマウスの活動電位はスパイク状であり,その心電図はヒトの心電図と異なる特徴があり,実験研究を行う上で留意が必要である.

  • 井川 修
    2023 年 43 巻 3 号 p. 206-216
    発行日: 2023/10/31
    公開日: 2023/11/03
    ジャーナル フリー

    His束以下の心室内刺激伝導系(VCS)は,構造的に隔絶され電気的に絶縁された伝導路である.VCSを下行する電気的興奮は心室乳頭筋群へ最早期に到達し,それらを興奮・収縮させて房室弁組織を支持した直後,周囲固有心筋を興奮・収縮させる.心室収縮に伴う房室弁反転を防止する「乳頭筋→固有心筋興奮・収縮順序」は「機能的・構造的房室弁逆流防止機構」と認識できる.心室最早期興奮部位の左室前外側(LAPM)・後内側乳頭筋(PMPM)近傍の興奮は,初期心室興奮ベクトルを形成する.LAPM-PMPM間には,固有心筋の橋渡し心筋(bridging myocardium)がある.左脚前枝(AFLBB)-後枝(PFLBB)間は早い両方向性の伝導特性を有するPurkinje線維(linking Purkinje fiber)により連結されている.これにより,左脚分枝ブロックが心室内伝導障害であるにもかかわらず,狭いQRS幅であることの説明が可能である.

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