心電図
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心室遅延電位の体表面分布―加算平均心電図のマッピングによる検討―
(I) 陳旧性心筋梗塞症について
加藤 千雄菱田 仁近松 均嶋地 健可児 篤野場 万司安井 直松山 裕宇石黒 良明渡辺 佳彦水野 康
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1992 年 12 巻 1 号 p. 96-107

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抄録

心筋梗塞症 (MI) における加算平均心電図 (SAEOG) の体表面分布を知るため, 発症後1ヵ月以上経過したMI93例 (前壁群50例: A群, 下壁群43例: I群) を対象とし, 胸背部28点よりSAECGマッピングを行い, 濾波後QRS時間 (fQRSd) の分布を検討した.各々の誘導点が有するアーチファクトや誘導部位の影響を除くため, 患者のfQRSdより健常対照11例のfQRSdの平均値を減じ, その値のばらつきの程度を標準偏差 (SD) に対する比で表し, departure ratio map (DR map) と命名した.DR mapの極大はA群, I群ともに前胸部から背部にかけて広く分布したが, A群で左胸部, I群で右胸部下部に2SD以上の極大と, 正領域に取り囲まれたように位置する負領域を有した例の心室頻拍 (VT) 合併率は有意に高かった.DR mapのかかる特定のパターンはVTの発生基盤に関係している可能性が示唆され, fQRSdの体表面分布を評価する場合, 延長領域ばかりでなくそれに囲まれた相対的短縮領域にも着目すべきことが示唆された.

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© 一般社団法人日本不整脈心電学会
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