抄録
症例は69歳の男性.前壁心筋梗塞発症6時間後に記録した加算平均心電図 (SAE) では, 心室遅延電位 (LP) が陽性であったが, 発症24時間後にはLPは陰性となった.第9病日以降, 再びLPは陽性となり, 第20病日に突然, 心室頻拍, 引き続き心室細動が出現した.心筋梗塞発症後の致死性不整脈に対する評価法として, LPを用いた成績が集積されつつあるが, 心筋梗塞急性期のLPの動態に関しては, 一定の見解が得られていない.本症例は, SAE所見が心筋梗塞症の経過とともに, 変化することを示唆する貴重な症例であると考えられた.