心房粗動 (AF) の誘発に及ぼす抗不整脈薬の影響について検討した.対象はジソピラミド (DP) 2mg/kg投与前後で, 右房高位刺激により通常型AFの誘発予防効果が検討できた15例.投与後誘発不能となったのは5例で誘発帯縮小は2例であり, これら7例をE群, 投与後のみ誘発された2例と誘発帯拡大例6例をN群とした.E群はN群に比し, 右房有効不応期 (ERP) の延長比は有意に大で (p<0.01) , 周期300msecでの心房間伝導時間 (TACT) の延長比は有意に小であった (p<0.005) .IAOTの延長比に対するERPの延長比の割合は, N群 (0.74±0.11) は全例1以下でE群 (0.96±0.19) に比し有意に小 (P<0.05) であった.DP投与によるAFの誘発抑制には不応期延長が大きく関与した.DPにより不応期延長を上まわる伝導遅延が生じれば, 興奮間隙の拡大によりAFは誘発されやすくなることが臨床例でも示された.