抄録
異方性伝導時の局所QT間隔の変化を心表面マッピング法を用いて検討した.麻酔開胸犬の左室心表面47点から単極および双極電位を記録した.前者からQT, 後者から局所興奮到達時間 (AT) を計測し, QTからATを引いたものを局所QT間隔 (QTI) と定義し, 再分極時間の指標とした.6点同時刺激により心筋線維走行に平行 (L) および垂直 (T) 方向の興奮波を作成した.興奮の等時線図から異方性伝導が確認された領域でのQTIは, 心房刺激時 (161.0±14msec) に比しL, T伝導時 (217.2±15, 203.4±18msec) とも有意に延長し, L伝導時に最長であった (n=9, p<0.001) .この延長効果は刺激部位から遠ざかるにつれ減弱し, 刺激部位から19mm以内での空間的勾配はL伝導時に比しT伝導時により急峻であった.以上, 生体位心の心室筋局所再分極時間は生理的伝導時に比して異方性伝導時に延長し, 空間的不均一性が増大することが示され, その機序として‘下流’からの電気緊張的影響が示唆された.