1997 年 17 巻 4 号 p. 358-360
〈目的〉近年ミトコンドリア (Mit) 遺伝子変異に起因する心筋症の存在が指摘されつつある.一方糖尿病においてもその原因としてMit遺伝子異常が報告されつつある.そこで本研究ではMit遺伝子異常を伴う糖尿病の心病変につき検討した.
〈方法〉対象は220例の糖尿病患者の末梢血よりPOR法にてMit DNAのtRNA-Leu (UUR) 遺伝子上3243番目の塩基でA-G変異の有無を検索し, 変異が確認された7例 (3.1%) であり, 心エコー検査, Tl心筋シンチ, 一部の例では心筋生検を施行した.
〈結果〉心エコー検査にて7例全例に心肥大を認めた.7例中2例においては心エコー検査にて%FSの低下およびdiffuseな壁運動低下を認めた.TI心筋シンチでは7例中5例では正常像を呈したが2例では灌流欠損を認めた.心筋生検を施行した2症例では電顕では巨大なミトコンドリアを認めた.
〈総括〉Mit異常を有する糖尿病においてはMit異常を基盤にして心肥大を呈し, 一部の例では心不全に至ることが示唆された.