不安定狭心症において胸痛に伴う著しいST低下やT変化を認める例は, その後急性心筋梗塞や心臓性突然死に移行する可能性が高い.しかしST部分やT波の変化は非特異的な場合も多く, 心筋虚血の検出における心電図の限界である.私たちは心筋梗塞発症前の不安定狭心症におけるST部分やT波に加えU波変化の出現誘導とその頻度について検討した.前壁梗塞へ進展した症例で有意に認められた主な所見は前壁誘導における0.1mV以上のST低下, 二相性T波, 陰性T波, 二相性U波, および陰性U波であった.一方, 下壁梗塞へ進展した症例では下壁誘導における二相性T波, T波終末部陰転, および二相性U波が有意所見であった.不安定狭心症より心筋梗塞へ移行した症例では特徴的な虚血性変化が認められていた.またこれらの虚血性変化の出現誘導によって梗塞部位の予知の可能性も示唆された.