抄録
左側潜在性副伝導路例に僧帽弁輪下部から刺激を行い心室付着端を同定する方法 (弁下刺激法) を用い, 副伝導路の斜走距離と弁下刺激法における最短刺激―心房波時間 (St-A) との関係について検討した.また, 右室から刺激を行い最早期心房興奮部位を同定する方法 (右室刺激法) に比べ, 弁下刺激法が有用か否か検討した.33例中21例に弁下刺激法を行った.76%に5mm以上の斜走を認め, 斜走距離は10.6±3.7mm, St-Aは55.4±5.8msecで, 斜走距離の延長に伴いSt-Aは延長し, 有意な相関を認めた (R2=0.882, p<0.001) .それらには「St-A (msec) =40+1.5×斜走距離 (mm) 」という関係が認められ, 弁下刺激法を用いて心室付着端を同定するときに有効な指標となるものと考えられた, また, 15例に弁下刺激法のみを用い, 12例に右室刺激法のみを用いて僧帽弁輪下部から通電を行い, 通電回数 (5.4±3.0vs1.2±0.4, p<0.01) , 全術時間 (85.3±43.9分vs42.0±14.5分, p<0.01) とも有意に弁下刺激法が勝った.