2002 年 22 巻 1 号 p. 16-24
近年, ATPの一過性洞機能抑制作用を用い洞不全症候群 (SSS) 診断を行う試みがなされているが, その診断機序は明らかではない.今回ATPによるSSS診断の可否, および洞結節電位直接記録を用いてその診断機序について検討した.対象はSSS (S群) 24例, 対照群 (C群) 21例.心臓電気生理学的検査下にATP0.2mg/kgを静脈内投与したところ, S群の85.7%で洞房ブロックが引き起こされたが, C群では認めなかった, 投与後の心房周期の延長度 (△ATPAA) はS群でC群に比し有意に大であった.△ATPAAの正常上限値をC群の平均+2SD (868msec) とすると, これによるSSS診断の感度, 特異度は87.5%, 95.2%と高率で修正洞結節回復時間を用いた診断率と同率であった, ATPはSSSにおいて特異的に洞房ブロツクを伴う高度心房停止を惹起することより, SSS診断に有用であると考えられた.